「分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」は、群馬県館林市の茂林寺(もりんじ)に伝わる伝説であり、日本中で愛されている昔話です。単なる「タヌキが化ける話」以上の、不思議な縁起と功徳(くどく)に満ちた物語です。
1. 物語のあらすじ
一般的に知られているストーリーは以下のような流れです。
- 助けられたタヌキ: 貧しい古道具屋(または屑屋)が、罠にかかっていたタヌキを助けます。
- 恩返し: タヌキは恩返しのために「茶釜」に化け、自分を売って金にするよう言います。
- 茂林寺へ: 茶釜は茂林寺の住職に買い取られます。しかし、火にかけられると熱さに耐えきれず、頭と尻尾が飛び出した半人半獣(タヌキ釜)の姿になって逃げ出しました。
- 見世物小屋: 寺を逃げ出したタヌキは古道具屋のもとへ戻り、綱渡りなどの芸を披露する見世物小屋を開いて、古道具屋を大金持ちにしました。
- 最後: 十分に恩返しを終えたタヌキは、最後は元の茶釜の姿に戻り、茂林寺に奉納されたといいます。
2. 茂林寺に伝わる「真実の歴史」
お寺に伝わる伝承では、少し趣が異なります。
- 守鶴(しゅかく)和尚: 応永33年(1426年)、茂林寺の開山に際して「守鶴」という僧侶がやってきました。
- 尽きないお湯: 守鶴が持ってきた茶釜は、いくらお湯を汲んでも尽きることがなく、一度に数千人にふるまうことができたと言われています。
- 正体: 数百年後、守鶴が昼寝をしているときに、うっかり尻尾が出ているのを人に見られてしまいました。正体が数千年を生きた古狸であることを悟った彼は、姿を消しました。
この「福を分ける(分け隔てなくお湯を配る)」という功徳から、「分福」という名がついたとされています。
3. 「分福」には素敵な意味が込められています。
| 項目 |
意味 |
| 分福 |
自分の福を独り占めせず、他人に分け与えること。 |
| もう一つの説 |
沸騰する音「ブクブク」から転じたという説もあります。 |
4. 現在の茂林寺
現在も群馬県館林市の茂林寺には、この伝説のモデルとなった「分福茶釜」が実在しており、拝観することが可能です。
- タヌキの像: 参道には20体以上のユーモラスなタヌキの石像が並んでおり、フォトスポットとしても人気です。
- 御朱印: タヌキが描かれた可愛らしい御朱印も授与されています。
豆知識: ちなみに、日本テレビ系の「まんが日本昔ばなし」などで全国的に有名になりましたが、江戸時代の草双紙(絵本)の頃から、タヌキが綱渡りをするイメージは定着していたようです。